某フードデリバリー配達員の読書ブログ

フードデリバリー配達員が読んだ本のまとめと感想

成田悠輔 著「22世紀の民主主義」の感想

今の民主主義の問題点をわかりやすく捉え、それをどうすれば解決できるのかという事を提案してくれている本「22世紀の民主主義」を読み終えました。

個人的に成田先生の考え方や言動が好きなので、そんな成田先生の考え方に触れることができる1冊とあってワクワクしながら読みはじめ、さすが成田先生は頭がいいという感想と共に読み終えることが出来ました。

そんな「22世紀の民主主義」について、個人的に印象的だった部分を書きたいと思います。

民主主義について

民主主義とは何か。

そういう基本的なことはすでに知っている人が多いと思いますし、そこを掘り下げていくと全然話が進まないと思うので、色々なことはすっ飛ばします。

単純に、今の民主主義は機能不全に陥っているので、新しい民主主義を定義しなおさないか?という話だったと僕は捉えています。

その上でなるほどな…と思ったのは次のような点。

民主主義の非効率な側面がモロにではじめている

印象的だったが、コロナ禍での対応で民主主義国家は初動でつまづいているということ。

非民主主義国家は初動から封じ込めるための動きの足並みが揃っていた。

これにはとても驚いた。

非民主主義国家は権力を持つ層が決めればそう動くので対応が早いのは当然の事だけど、これがコロナ禍の対応だけではなく、経済成長でも民主主義国家は非常に鈍く、非民主主義国家は大きく成長しているという事。

中国などのように経済成長を大きく遂げることで、非民主主義国家でも経済成長を実現できるんだというモデルケースになっているので、民主主義をとりいれる動機も弱くなりつつあるのかな?とも思う。

民主主義は資本主義の正しいブレーキになっているのか

資本主義は競争を煽り、富めるものはさらに富むという性質を持っている。暴れ牛と表現する人もいる。

それをなだめる手綱の役割を担うのが民主主義と言われていて、資本主義と民主主義が両輪で国家を動かすから機能するというのうがひとまずの理想として掲げられている。

でも、民主主義が本当に正しく機能しているのか?というと、はなはだ疑問というのがこの本の存在意義とも言えるかもしれない。

選挙制度の不完全さ

民主主義の根幹は何かとなると、やはりそれは選挙制度。 その選挙制度そのものが今の状況を反映していない。

これは多くの人が肌感覚として感じている事ではあると思うけど、実際にそう。

一人一票ではあるけど、果たしてそれが本当に民意を正しく捉えているのか。

多角的にそれを本の中で検証されていたけど、どう考えても今の選挙制度はもう無理であることを証明している。

例えば、平均寿命に対する余命で一票の重みづけを変えたら、色々な選挙結果が実は変わっていたかもしれないという事が分かっている。

アメリカの大統領選挙では、トランプではなくヒラリークリントンが大統領になっていたことになる。

1人一票ではあるが、各々が自身の人生だけの事を考えているのなら、死んだ後のことを想像して投票する人がどれほどいるのだろうか?

そして、老人が多い状況の中で若者の民意が反映される余地はどれほどあるのだろうか?

そういう面で、今の選挙制度は機能していない。

他にも。

選挙のたびに色々な政策のテーマが挙げられる。

その政策に対して全ての人が全てに等しく興味があるわけでも、詳しいわけでもない。この政党のこれに関する政策は賛成だけど、他の政策は反対、みたいな事も当然ある。

なのに、1人一票で票を投じ、その投票行為によって政党が力を持ち、政治を行っていく。

やり方は果たして正しいのか?

1つの政策を支持したばかりに、気に食わない他の政策は目をつむらなくてはいけない。その逆も起こりえるが、それで良いのか。

そこで仮に1人100票持つようにして、政策ごとにその範囲内で好きだなけ票を投じるようにすれば、詳しいことや関心が強いものほど多く票を投じるようになる。

その結果、個人個人の価値観のグラデーションを反映できるのでは?みたいなアイデアが出されている。

これには共感しかない。

ただ、1つ絶望的なことがある。

現行の選挙制度を使って当選した議員が、現行の選挙制度を変えることに前向きになるわけがないという、選挙制度を変えないことにだけインセンティブが働きすぎている点。

変化によって自分たちが不利になるかもしれないなら、絶対に変えようとしない。

問題の根っこはここなのだと思う。

民主主義が機能しないと資本主義が暴走する

資本主義のあばれ牛を止めるのが民主主義であり、民主主義とは選挙である。

経済は時代と共に形を変えていくし、富の偏りを生むので貧富は拡大していく。でも民主主義はリアルを反映していない。

その結果として、コロナ禍の初動対応でつまづいたり、経済成長で非民主主義国家に遅れを獲っているのかもしれない。

このままいけば民主主義国家そのものがダメになるのではないか?

そんな投げかけを為されていて、首を縦に降り続けるしかありませんでした。

 

日本では世襲制に疑問を持つ人が少なくありません。僕も世襲制は禁止にしてもいいと思っています。

なぜなら、選挙制度がより機能しなくなるからです。

世襲の場合、政策ではなくて利権で当選者が選ばれ続けます。 この仕組みを残すことは民主主義が正しく機能しないことになるはずです。

とにかく選挙制度が現実に即していません。

でも、選挙制度を変えることは現役議員にしかできず、現役議員が自身が不利になるような制度を採決するわけがない。

選挙制度を絶対不可侵なものではなく時代と共に変化をさせ続けることが民主主義を機能させる事になるが、そのいい方法が浮かばない。

本の中では若者が暴動でも起こすなり・・・みたいな表現もありましたが、本当にそういう気持ちになるぐらいに絶望的な状況にあると思います。

日本をよりよくしたいと思うのなら、目先の政策だけを議論するのではなく、選挙制度そのものを変える、代議士制度というものの存在意義や存在価値を問う。

そんな事が大切なのでは?という新しい視点を「22世紀の民主主義」を通して得ることができました。

バカな自分が少しだけ賢くなったような気がします。